実店舗やECサイト運営している様々な小売事業は、多くの企業がオムニチャネル戦略を行なっています。
オムニチャネル化を成功させることで、売上・利益向上だけでなく、お客様へのサービス向上という意味でも多くのメリットがあります。
この記事ではオムニチャネルの基礎的なところからオムニチャネル戦略、オムニチャネルに必要なデータ、オムニチャネルに必要なシステムまで、詳しく紹介していきたいと思います。
オムニチャネルとは?
まずオムニチャネルの意味を説明すると、オムニという言葉には「すべて、広く、あまねく」という意味があります。
チャネルとは商品やサービスを売るための「販売経路」のことで、マーケティングの観点でいうと「①コミュニケーションチャネル、②流通チャネル、③販売チャネル」に分類されます。
上記の記事では売るための「②流通チャネル、③販売チャネル」について詳しく書いていますが、チャネルといっても実店舗やECサイトをはじめ以下のようなチャネルがあります。
実店舗(POS)
ECサイト
スマホやタブレットなど(アプリ)
WEBメディア(自社サイト)
⇒オウンドメディア戦略、3つのマーケティングチャネルを活用しよう
SNS
テレビやラジオ
カタログや雑誌などの媒体
⇒雑誌が運営するWebメディア指標一覧!掲載ならどのメディアか?
屋外広告やサイネージ
その他
オムニチャネルとは、この「オムニ=すべて」と「チャネル=販路」を合わせた言葉で、すべての販売チャネルやコミュニケーションチャネルをすべての統合することで、どのチャネルからも同じように商品を購入できたり、情報を入手することができる環境を実現することです。
オムニチャネル戦略とは?
オムニチャネル戦略とは、実店舗やECサイト、アプリなど、あらゆるチャネルを統合し、企業としての売上アップおよびサービス向上を行なう戦略のことです。
最終的に販売につながるチャネルは「実店舗もしくはECサイト」となるので、お客様が実店舗やECサイトに訪問したときの「買いたい」と思ったときの接点ではなく、すべての接点でいかにタイミングよく有効なアプローチができるか?ということを考え抜かれた戦略です。
さらにオムニチャネル戦略を行なっていくことにより、お客様ひとりひとりの一元管理されたデータを積み重ねていくことで、企業としてのマーケティング精度も向上します。
オムニチャネル戦略を実現させるには?
オムニチャネル戦略を実現させるには、企業内の組織を統合する必要があります。
なぜなら企業内の組織である(実店舗、EC、営業、卸、、カスタマー、マーケティング)など、バラバラに機能していた組織や部門を統合しなければ、バラバラになっている顧客データを集められないからです。
ですがオムニチャネル戦略を進めるにあたっての組織改革は各部門が衝突してしまう可能性もあります。
たとえば実店舗では売上が一番重要ですが、オムニチャネルによってECサイトに売上が流れてしまうということも懸念され、オムニチャネルに肯定的でない反応があったりします。
企業全体としてオムニチャネル戦略を実現するのであれば、このような部門や組織をひとつにまとめ、企業全体の意識統一を行なうことが必要になります。
オムニチャネル戦略に必要な2つのデータ
そんなオムニチャネル戦略ですが、大規模~小規模に関わらず、オムニチャネル戦略に必要な2つのデータが存在します。
その①:顧客データ
オムニチャネル戦略において一番重要なものは、顧客データです。全チャネルから得た顧客のデータを統合し、顧客データベースを構築しましょう。
まず統合顧客データをつくるには多くの場合、店舗顧客の情報(顧客情報や購買情報)をデータ化し、ECサイトの顧客データと紐づけて統合顧客データとします。
つまり、実店舗やECサイトで「誰が、何を、いつ」買ったのかということがわかるようになります。
あたりまえですが、このような顧客データベースをつくるためには会員登録が必要になります。
当然会員登録をしていただくには、値引きやポイント還元など、お客様にメリットがないと会員登録をしてもらえません。考え方として重要なのは、ポイントはお客様への還元策であると同時に、貴重な顧客情報をお客様からいただくコストという認識を持ちましょう。
それにより実現できること
その統合した顧客データを活用することによって実現できることは、顧客ひとりひとりの購入チャネルの分析ができるようになります。
初回購入が実店舗なのか?ECサイトなのか?、実店舗であれば新宿店なのか?渋谷店なのか?直営店舗なのか?アウトレットなのか?という販売チャネルの分析もできますし、それぞれの初回購入のチャネルとは別に、2回目の購入チャネルはどこか?3回目の購入チャネルはどこなのか?ということを把握できます。
それ以外にも、リピーターになる遷移率や離脱率、F2転換率、F3転換率、F2転換リードタイム、F3転換リードタイムなどを把握することで、どの販売チャネルでご購入をいただけると買われると、よりLTV・注文件数の最大化が図れるのか?ということを分析することができます。
つまり的確なCRM施策を実行していくのに必要不可欠なデータとなります。
⇒BIツールとは?導入すると何ができる?どんな企業に必要なのか?
その②:在庫データ
次にオムニチャネル戦略に大事なのは「在庫データ」です。
最終的には販売チャネル(実店舗やECサイト)で購入をしてほしいという目的があるので、在庫がなければ商品は売れないということになります。
つまり「在庫数=売上可能金額」となるので、在庫データを活用することで、最適な販売チャネルへの在庫確保を可能にし、機会損失を避け、売上アップさせるには非常に重要なデータです。
在庫データを企業全体、全チャネルで統合し一括管理することが重要です。
それにより実現できること
在庫データを一括管理し、活用することで実現できることは、お客様へのサービス向上です。
具体的にいうと商品を購入する際に、実店舗でもECサイトでも「いつでもどこでも買えて、どこでも受け取れる」ようになります。
たとえば在庫の統合により、実店舗やECサイトの垣根を越え、どこで買っても全社の在庫から在庫照会ができる。これで機会損失の極小化を実現し、企業側としては過剰在庫をおさえることができます。
お客様としては実店舗で在庫がなくてもECにあるということが店舗でわかり、ECサイト上では最寄り店舗に在庫があるということを把握したうえで、店舗に行くことができます。
在庫データを統合すると、どこでも購入した商品を受け取れる「受取場所の自由化」が実現できます。
実店舗で購入した商品をECの在庫上から発送したり、ECでの購入のときに自宅への配送だけでなく、店舗での受け取りを可能にします。
このようなことで、ECで買った商品を店舗での試着できたり、取り置きをするサービスが実現します。
このようにサービスレベルを高めて、顧客満足度の向上を図るということも在庫データを統合するオムニチャネル戦略になります。
オムニチャネル戦略に必要なシステムは?
オムニチャネル戦略を実現するには、いくつかのシステム導入も必要になります。その必要なシステムを3つご紹介します。
POSシステム
まずは実店舗で使用する「POSシステム」です。
POSシステムとは実店舗での情報管理をシステムで、これでレジのように売上管理を行なったり、顧客データを登録・参照したりします。
POSシステムは大手IT企業が提供している高額のものから、無料で使えるAirレジなどのタブレットPOSシステムも存在するので、POSシステム比較・一括お問合せサイトも参考にしてみてください。
ECシステム
ECシステムもオムニチャネル戦略に対応が可能なプラットフォームを選ぶ必要があります。
オムニチャネルを実現させるには、顧客データや在庫データをはじめ、他のデータを様々な外部システムとデータを連携させる必要があるので、連携のカスタマイズが可能なECシステムを選ばなければいけません。
カスタマイズ可能なECシステムとは、以下のECシステムです。
①ECパッケージシステム
⇒ECパッケージシステムでECサイト構築、7つのメリットをご紹介
②クラウドECシステム
③オープンソースECシステム
⇒EC-CUBE(オープンソース)でECサイト構築はアリなのか?
⇒EC構築 ASP・クラウド・パッケージの違いをかなり詳しく説明
顧客管理システム(CRM、MAツールなども含む)
基幹システムで顧客管理の機能を備えている場合は必要ありませんが、顧客管理機能がない場合は、顧客管理システムが必要です。
顧客管理システム(CRMシステム)では、メルマガなどの配信ができるようなマーケティングオートメーション機能を備えているものもあるので、ECサイトや基幹システムと連携できるシステムを選定しましょう。
⇒マーケティングオートメーション導入する前にこれだけは見て!
まとめ 2つのデータを統合し、オムニチャネル推進をしよう
少し長くなってしまいましたが、オムニチャネルという言葉の説明からオムニチャネル戦略、実現のポイントを説明しました。
オムニチャネルを実現するということは、事業やチャネル単位ではなく、会社としてお客様へのサービス向上を目的としていくという、非常にハードルが高く、長い時間がかかることです。
ただお客様へのサービスレベルを高め、顧客の囲い込みということを考えると、少しづつ小さなことからでも行っていくことが重要だと思います。
今でさえ国内の有名・大手企業がオムニチャネル戦略に取り組んでいますが、日々試行錯誤をしながら実践をしていますので、ぜひみなさまもチャレンジしていきましょう!