多角化する消費者行動や市場の変化により、2021年以降の小売企業における「ECマーケティング戦略」は、非常に難しいものになります。
たとえばアマゾンのプライムデーの市場拡大や、配送問題、サステナビリティの問題など、小売企業のECマーケティングにおいては課題が山積みです。
アメリカのRetailMeNotが、5,000名以上の消費者を調査し、200名以上のマーケティング担当者を調査した結果、投資分野を始めとした2020年の動向やチェックすべきポイントを10つまとめています。
この記事では、2021年に小売企業のECマーケティング戦略において重要な10つのポイントについて解説します。
- 1 小売企業のECマーケティング戦略で重要な10つのポイント
- 1.1 ①年末セールは7月のアマゾンプライムデーになるのか?
- 1.2 ②【配送問題】即日配送と無料配送のどちらを消費者は望んでいるのか?
- 1.3 ③Web接客ツールはは小売ECサイトのレベルを上げる手助けになるのか?
- 1.4 ④EC小売企業は2020年、何に投資していくのか?
- 1.5 ⑤クレジットカードが小売企業に与えているデメリット
- 1.6 ⑥環境に優しい、サステナビリティな買い物を消費者は気にしているのか?
- 1.7 ⑦実店舗 VS ECサイト 正直どっちで購入したいのか?
- 1.8 ⑧消費者はサブスクリプションサービスに関心はあるのか?
- 1.9 ⑨選挙や政治はどれくらい小売企業に影響を与えるのか?
- 1.10 ⑩無料配送オプションを期待するが、小売企業に圧力がかかる
- 2 2020年 消費者の期待に小売企業は答えられるか
小売企業のECマーケティング戦略で重要な10つのポイント
まずこの記事で紹介している概要を説明すると、アメリカのオースティンに本社を置き、オンラインクーポンサイトを運営しているRetailMeNotが発表した、2020 Retailer PlayBookを参考にしています。
この調査は、2019年11月21日〜11月27日に小売企業のマーケティング担当者(206名)と、11月25日〜12月4日に18歳以上の消費者(5383名)を対象に調査されたものです。
それにより2020年の小売企業のECマーケティング戦略で重要な10のポイントが発表されたので、詳しく解説します。
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①年末セールは7月のアマゾンプライムデーになるのか?
まずはEC事業者にとって無視できない、7月に実施されるアマゾンプライムデーについてです。
- 59%の消費者が、年末セールよりプライムデーの方が良かったと考えている
- 51%の小売企業が、2020年はリソースを年末ではなく7月にシフトさせる予定
消費者の約6割がブラックフライデーおよび年末セールよりも、7月のアマゾンプライムデーのほうが良い買い物ができたと答えており、それにより51%の企業が、リソースを第4四半期から第3四半期にシフトし、2020年はプライムデー期間に競合させると答えています。
ちなみに2019年RetailMeNotの調査によると、300を超える小売業者がプライムデーのタイミングで実施しており、前年から55%の増加しています。
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②【配送問題】即日配送と無料配送のどちらを消費者は望んでいるのか?
つづいて国内でも多くの課題がある配送についての調査です。
- 82%の消費者が、 無料配送もしくは、有料の最速配送オプションを選択している
- 63%の小売企業が、 競合他社が提供する配送オプションの実施に苦労している
82%の消費者が遅くても良いので配送無料で購入をするか、有料の最速配送を選んでおり、それに伴い63%の小売企業が配送オプションの提供に苦労しているという調査です。
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③Web接客ツールはは小売ECサイトのレベルを上げる手助けになるのか?
つづいてはECサイト上でのコンシェルジュサービス(Web接客)についての調査です。
- 43%の消費者が、ECサイトのWeb接客サービスを今のところは「良い」と答えている
- 28%の小売企業が、もっと良いWeb接客ツールに変えたいと考えている
国内でもKARTEなどのWeb接客ツールが普及していますが、このようなツールを導入することで、一人ひとりにあったパーソナライズのサービスを提供することができるようになります。
近年はAIを搭載したツールもたくさん出てきているので、かなり精度が高くなってきています。
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④EC小売企業は2020年、何に投資していくのか?
続いては小売企業が、2020年にどんなところに投資していくのか?ということを調査した結果です。
モバイル向け広告(Mobile Advertising)は投資が減少する予定
- 2019年:88%
- 2020年:67%
SNS向け広告(Social Advertising)も投資が減少する予定
- 2019年:81%
- 2020年:62%
ボイスコマース(Voice-Assisted Shopping)も投資が減る予定
- 2019年:53%
- 2020年:38%
おためしサービス(Try-Before-You-Buy)も投資が減る予定
- 2019年:50%
- 2020年:33%
この4つの項目に関しては、すべての企業が投資を減らしていく予定ということでした。
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⑤クレジットカードが小売企業に与えているデメリット
- 2/3の小売企業が、クレジットカード側の特典により、消費者が関心を寄せるロイヤルティプログラムを行えなくなった
- 88%の小売企業が、2020年にアプリやクレジットプロバイダーなどの第三者と提携して報酬を提供する予定
ちなみに2020年に45%の消費者が、小売業者がVIPリワードプログラムを提供することを期待しているようです。
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⑥環境に優しい、サステナビリティな買い物を消費者は気にしているのか?
いま話題になっている環境問題やサステナビリティなどは、実際消費者は考えているのでしょうか?
- 51%の消費者は、環境に優しい配送オプションを備えた買い物をしたい
- でもそのためにお金を多く払う消費者は、36%だけしかいない
約半分の消費者は環境問題を考えてはいるが、とはいえそのためにお金を多く払う消費者は36%しかいませんので、環境問題よりは費用が安い方を選ぶ傾向にあります。
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⑦実店舗 VS ECサイト 正直どっちで購入したいのか?
つづいては実店舗での買い物と、ECサイトでの買い物はどちらが好まれているのでしょうか?
- 64%の消費者は、価格が店に行くのと同じであればECサイトで買いたいと考えている
- なので価格メリットが無いと39%の消費者は店舗で買わないと考えている・・が、
- 73%の消費者は、送料を避けるために実店舗で買い物する
このように価格が同じ日用品などであれば、ECサイトで購入をしたいと考えているので、実店舗はメリットがないと集客が難しいということになります。
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⑧消費者はサブスクリプションサービスに関心はあるのか?
続いて話題の定額サービス(サブスクリプション)についてです。
- 15%の消費者が、サブスクリプションサービスを利用している
- 今後サブスクリプション利用者はは35%に増える見込み
ちなみにサブスクを利用している世代は、1ヶ月間にこれくらいの利用料を払っています。
- Z世代(〜25歳):45ドル
- ミレニアル世代(25歳〜40歳):52ドル
- X世代(40歳〜60歳):36ドル
- ブーマー世代(60歳〜):28ドル
このなかでもミレニアル世代が、最もサブスクリプションサービスを利用している金額が高い世代になります。
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⑨選挙や政治はどれくらい小売企業に影響を与えるのか?
これはアメリカの話が中心ですが、大統領選挙についての小売企業への影響についてです。
- 90%の小売企業が、2020年の大統領選挙の年にマーケティング方法を変更する
- 40%の消費者が、大統領選挙により購入するブランドが変わると言っている
このような調査結果が出ているのですが、それにより小売企業はこのようなことを考えています。
- 56%の小売企業が、SNSで政治的なつながりを意識します
- 48%の小売企業が、社会的な価値について意識します
- 44%の小売企業が、選挙結果からの購買傾向を調査します
- 44%の小売企業が、選挙結果からのマーケティングを設計します
- 43%の小売企業が、選挙日に関連したセールを行う予定
とこのように大統領選挙による、消費者の購買動向を調査しながら、それに合わせてマーケティングやセールも検討していく予定ということです。
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⑩無料配送オプションを期待するが、小売企業に圧力がかかる
最後に、無料配送オプションについてです。
- 44%の消費者が、今は送料無料オプションが増えているので、2020年のホリデーシーズンの後半に買い物をします
- 81%の消費者が、小売企業に対して迅速な無料配送オプションを期待しています
送料無料の配送オプションも増えてきているので、今の消費者は急いで買い物をしたりしなくなってきています。
2020年 消費者の期待に小売企業は答えられるか
ここまでご覧いただきありがとうございます。
多角化する消費者行動や市場の変化により、2020年以降の小売ECマーケティング戦略は、非常に難しいものになります。
アマゾンをはじめとした大手企業が消費者に対して素晴らしいサービスを提供しているため、消費者の期待値も高くなっていて、2020年は期待値の上がった消費者に対してサービスを提供していかなければ、小売企業のECサイトでは苦戦を強いられることになります。
ぜひこの10の重要なポイントをチェックして、自社のECサイトでよりよいサービスを提供できるようにしましょう。
もしよければ「【2020年最新】大手ECサイト・ネット通販売上高ランキングTOP100を発表!」もご覧ください。